最近、私のはり治療院のホームページの中で、はりはどんな病気や症状に効くのかについて書き始めましたので、今回は以前に鍼師向けのテキストを作ったものがありましたので、それを患者さん向けに改めたものを寝違いについて作ってみました。
お読みいただければ幸いです。
皆さまからのお尋ねなどいただきますとメールでお答えします。
#### 初めに
「寝違い」または「寝違え」ともいわれますが、今回は「寝違い」として書いてまいります。
これに対する鍼治療はたまに治りが遅いこともありますが、比較的はり治療の効果が早く現れる、治療しやすい症状の1つであるということが言えます。
#### 寝違いとはどんなものか
朝起きたら首が痛くて動かすのが辛い、じっとしていても首が重苦しい。
こんな事があれば多くの場合寝違いなので、はり治療院への来院をお勧めします。
#### 本症の原因と病状
寝違いは次のような1から3などの下地があって、不自然な格好で眠っているうちに起こります。
1.風邪気味で首が突っ張っている。
2.宴会などや精神的なストレスで胃腸が弱っていて、その反射で肩くびが突っ張っている時。
3.変わったことをした後、引っ越し・お芝居や歌を見に行った後など、肩くびが突っ張っている時。
この上記の3つの下地がある時、おかしな姿勢で眠ると筋に痛みが起こります。
病態としては、上記の下地がある時、臥床すると筋には緊張のために、代謝と循環障害や異常な筋緊張が起こっていて、無理な姿勢(睡眠中で無意識下)をとると、局所に炎症が起こる。こうなると、患部は筋の異常な緊張と腫れが起こり、自発鈍痛と強い運動痛がみられるようになる。
上記の下地がないと、睡眠中に無理な姿勢をとっても、筋の柔軟性で筋内の循環は一定度保たれ、朝起きてやや首の違和感や痛みはあっても、しばらく後に治まってしまいます。
このような病態を考えると、胃腸を酷使しないことや、上記下地がある場合には、首の筋肉をはりでほぐしておくことが寝違いの予防のために必要であります。
#### 寝違いの分類
寝違いは痛みの部、つまり冒されている筋肉によって分類しますと、効果的にはり治療を行うことができます。
1.肩甲挙筋型
寝違いの半分以上はこの型で、肩甲挙筋が冒されているもので、首の横から肩甲骨の部分にかけて首を曲げたり、回したり、動かしたりする時に痛むものです。……これは寝違いの内でも治りが早いものです。
2.板状筋型
首をねじるように動かす時に、首の後ろで、耳の後ろの骨の出っ張りの下の部分に痛みがあるもので、1の肩甲挙筋型に比べると起こる確率は低いものの時々みられるものです。
3.その他の寝違い
上記、1肩甲挙筋型、2板状筋型、これらのいずれにも入らないものをいいます。
これはいろんなケースがあり、治り方もいろんな形があります。
#### 寝違いのはり治療
まず、次の場所にはりをします。
1.両側のおなか。
2.両側の肘から先の腕の部分と、膝から先のすねの部分……これはおなかも手足も当院では「自律神経調整刺鍼」と言っておりまして、身体全体を元気にするためのはりです。
当院ではほとんどの症状にこの自律神経調整刺鍼を行っております。足首のネンザ・食べ過ぎ・腱鞘炎等々もそうです。
3.悪い方の上部胸椎側部(背骨のそばの部分)。これは悪いところの腫れが背骨のそばに向けて吸収されるため、その吸収をよくするために背骨の際にはりを行います。
4.罹患筋部(悪くなっている筋肉の部)……これは上に書きました寝違いの分類の1の場合は、首の横の突っ張りの部と肩甲骨の内側の部。
同分類2の場合は、首の骨の際から耳の後ろ下にかけて。分類3の場合は痛んでいる筋を見つけてそこにはりを行います。……この筋の悪いところへのはりは腫れをとるためなので皮の下まで浅くそっと行います。
5.上記のはりの治療の後、悪い側の合谷(ごうこく、手にあるツボ)と手のひらとの揉みほぐしをすると寝違いの治りが早いのでそれを行います。