下痢のはり治療を行う場合には、何から下痢が起こったかを知ることが治るための予測をするために必要なので、よく話を聞いて、または、病院にすでにかかっていて検査が行われている場合には、その結果を聞いてから、はりの治療を行います。
#### 触診所見
はりを適切に行うためにはどんな変化が体に起こっているかをみます。その手に触れる体の変化を当院では触診所見とよんでいます。
下痢の場合にはまず腹部には、ヘソの両側に(上下のこともある)特に左側に新しい場合(炎症が強いものほど)びまん性に皮下に水を流したような、腫れぼったいというより、皮下にたまったような、しかも冷たいものを手に触れる。
これが、少しずつ日にちを経ると、同じ部に炎症の終わりによくみられる、つぶつぶしたものに変わっていきます。これはまだ証明されてはいませんが、皮下の滲出物が吸収されるか、他の部に流れていくのかではないかと思われます。
次に背中と腰に現れる所見で最も著明なのは、腰部のものです。これは、先ほど触れました、ヘソの両側の所見と同じような感じになります。この所見も、腹部のそれと同じように、日を経ると共に、びまん性のそれから、粒状のものに変わっていきます。
次に腸が不調な場合には、よく胃も疲れるか炎症があることが多いので、背部もややふくれ気味で、新しいこりのような所見が現れます。
その他の部の所見としては、腕の肘から先の後側や、すねの外側の皮下にむくみっぽくなっていたり、そのやや深い部分に小さな粒状だったり、短いすじ状だったりする所見があります。
#### 刺鍼法:どのようなはりをするのか
まず腹部は、先に書いたような所見に従って行います。そして、新しく急性なものに対しては、皮膚に置くだけのような気持ちで、ごく浅くあっさりとした感じではりを行います。腰部もこれと同じやり方です。背部は、もう少しはりを深く、といっても皮膚のすぐ下ぐらいまで行います。
背中と腰のはりが終わりましたら、私は自律神経調整刺鍼と呼んでいますが、腕の肘から先の後側とすねの外側部に軽く行います。このようなはり治療をしていきますと、多くの場合、下痢は数日で次第に回数が減ったり治まっていき、腰部と腹部の所見の所に書きましたように、つぶつぶのそれに変わっていきます。これくらいになると、はりの深さは皮下まで、または、そのつぶつぶの所見まで行ってよくなります。その頃には、下痢も次第に治まっていきます。